一条工務店よりも高気密の家を建てることができると謳っているハウスメーカーがあります。
家の性能と聞くと、気密性と断熱性を思い浮かべる方も多いと思います。今回の記事は、気密性の話です。気密性とはC値というもので現されます。家全体に外部との隙間がどのくらい開いているかを数値で示すものです。C値が小さいほど、高気密住宅だということになります。
一条工務店のi-smartは気密性や断熱性がいいことがアピールポイントになっています。大手ハウスメーカーではトップレベルです。ここに惹かれて一条工務店と契約する方も多いのではないでしょうか。
しかし冒頭で書いたように、ローコストハウスメーカーの中にも一条工務店をしのぐ気密性を謳うところがあるとしたら、「せっかく高価な一条工務店の家を建てたのに、そちらにすればよかった」と思われる方も少数ながらいるかもしれませんね。事実インターネットで情報を集めると、一条工務店以上の気密性を売りにしているハウスメーカーがたくさん存在しており、そのようなハウスメーカーで家を建てた方もたくさんいます。
それでは一条工務店で家を建てるのは間違いなのでしょうか?
いや、それは違います。
一条工務店で家を建てた意味はとても大きいのです。気密性を出すための施工方法には大きく違いがあるのです。C値については家づくりに熱心な施主さんは、散々調べつくしているかもしれません。しかしインターネット上の情報だけではわからない、C値について知っておくべき重要なこともあるのです。
これから家を建てる方、そしてもうすでに家を建てた方も、ぜひご一読いただけたら幸いです。ただし「一条工務店以外で高気密の家を建てられた方」には、読むと気分を害する可能性がありますのでご注意ください。
目次 (クリックで飛べます)
気密性を上げるには
気密性を上げるには、家の壁や床や天井の隙間を少なくする必要があります。ローコストハウスメーカーでも一条工務店以上の気密性を売りにしているところがあることから、実は気密性を上げることは難しくないことだと私は考えています。
気密性を上げるための方法
気密性を上げるためには、隙間をなくすように作るか、隙間をふさぐかの二通りの方法があります。
隙間をなくすか、隙間をふさぐか。ちょっと意味が分かりにくいですね。
2×4工法(一条工務店は2×6工法となりますが、2×4と2×6は壁の厚みの違いだけで、作り方は同じなので、この記事では2×4工法とさせていただきます)では、壁を作って、その壁を突き合わせて家を作っていきます。この場合、壁と壁の間に隙間ができることがあります。「隙間ができないようにするか」「できた隙間をふさいでしまうか」の違いがあるのです。
隙間をなくすように家を作ることは難しいです。一条工務店のi-smartは、上棟時に壁と壁を繋ぎ合わせるだけです。合わせ面には簡単なシールが入っているだけで、後から隙間を埋めることはしません。実際に上棟時に壁の突合せ部を確認しましたが、ぴったりと納まっていて隙間がまったくないのです。
私は一条工務店の関係者ではないので本当のことはわからないのですが、我が家では壁の隙間をテープで埋めて気密性を上げるようなことはされていませんでした。また、インターネット上の情報を調べてみましたが、「気密テープ」なるもので壁にテープを貼るというやり方がされたという情報は、見つけることができませんでした。
そして、高気密を売りにしているハウスメーカーは、大手も含めてほとんどが、断熱材を充填した後にシールテープで隙間を埋めるか、「発砲吹き付け断熱」という工法を取っているのです。
気密性を上げる発砲吹き付け断熱とは
発砲吹き付け断熱という新しい用語を使ってしまいましたので、それを少し説明させていただきます。
これは外壁と柱ができた状態で、断熱材を吹き付けて施工するものです。断熱材を吹き付けるため、柱と壁に隙間なく密着します。そのため壁一面に隙間のない家が出来上がります。家の精度が悪くても、発砲吹き付け断熱にすると高気密の家が作れるのです。発砲吹き付け断熱はコストがかかるため、ローコストハウスメーカーではこの工法はほとんどやっていないようです。この工法のメリットデメリットを語ると、またまたとんでもない量の文章を書くことになりますし、この記事の本題からは少し外れることにもなるので、この工法に興味のある方は、大変申し訳ありませんが、ご自分でご確認ください。
テープを貼って気密性を上げる
壁の合わせ面に隙間ができてしまう家で、簡単に気密性を上げるには、継ぎ目にテープを張ってしまえばいいのです。これで外部から空気はまったく入って来ません。隙間があってもテープで埋めてしまうだけで、高気密の家になってしまうのです。
家の精度を出すのは大変です。木であれば材料を加工した後に変形することもあるでしょうし、一つ一つのパーツもかなりの精度で作らなければなりません。当然コストがかかります。それらのコストを省いて壁の寸法精度に気を使わなくても、あとでテープ補修すれば気密性の高い家が完成するのです。
隙間をなくすか、それとも隙間をふさぐか。これは大きな違いです。ふさがれた隙間は、ふさいだものが取れてしまえば気密性は悪くなります。高気密と言われる家の中には、隙間をふさがれた「高気密住宅」が存在するのです。
私が気になるのは、「テープはほとんどの場合が室内側からしか貼れない」ということです。壁を付けてからテープを貼るしかないのです。
換気扇を回した場合、高気密の家だと室内のほうが室外よりも気圧が低くなります。家の外から中に、空気が入って来ようとするのです。そのときに室内側にテープを貼ってあると、外側から入ってくる負圧に負けて、テープが剥がれてしまう可能性はゼロではありません。
そんなことが本当に起こるのか、我が家でもちょっとテストしてみました。
二階天井裏点検口の断熱材を外して、入口を閉めました。これで点検口のまわりに隙間ができます。
ここに粘着力の強いガムテープを3辺に、粘着力の弱いマスキングテープを1辺に貼りました。
この状態でレンジフードの換気扇を最大で動かして、粘着力の弱いマスキングテープが剥がれるかチェックしてみました。
結果ですが、負圧に負けてマスキングテープが剥がれることはありませんでした。
テストではテープは剥がれませんでしたが、シールテープが換気扇を回すと常に剥がれる方向に引っ張られる状態になることは間違いなく、テープの粘着力も経年で劣化しますし、毎日少しずつ力が加われば、どこかのテープが剥がれてしまう可能性はないとは言えないのです。つまり後から隙間をテープで埋めるような高気密住宅は、いつまでも気密性を保つことはできない可能性があるわけです。
一条工務店のシールテープ
それでは一条工務店のi-smartでは、気密性を上げるためにテープを貼ることはないのでしょうか? 実は一条工務店でもシールテープ(気密テープ)はされています。されているのは天井です。屋根裏の板の継ぎ目にはシールテープが施されています。下の画像の床面にある黒い部分が、継ぎ目に貼られているテープです。
しかしこのシールテープは、外部、つまり天井裏の床面に貼られているのです。レンジフードなどの換気扇を回したとき、外部から内部に空気は入って来ようとします。外部にシールテープが貼られている場合、剥がれる力ではなく張り付く力が加わるため、剥がれにくい状態になっています。床面に貼られているので、重力で常に押し付けられますからさらに剥がれにくいです。万が一劣化して剥がれた場合でも、自分で屋根裏に入り込んで簡単に貼り代えることもできます。つまりこの施工は、私にとってはまったく問題ないものなのです。
隙間を埋めることについて
隙間を埋めることも高気密住宅にするひとつの手段ではあります。一条工務店も、ケーブルやホースが壁を貫通する部分には、シールで埋めることになっています。ただしケーブルやホースをシール材で埋めることは、構造的な問題を修正するものではないため、大きな問題ではないと考えます。しかもそのシールはシリコン系シール材であり、シールテープと違って簡単に剥がれるものではありません。
高気密にするためには数々の手段があります。どのような方法で高気密住宅を実現しているのか、契約前にしっかり確認することも重要ではないかと私は考えます。もしかしたらすぐに気密性の落ちる高気密住宅が存在するかもしれません。
極端なたとえですが、壁と壁の合わせ面に10mmもの隙間が開いていても、シールテープを貼ってしまえば気密性は保たれるのです。しかしその部分の断熱性能はシールテープ一枚分しかありません。もちろん遮音性もほとんどありません。気密性だけでは、家の性能は語れないのです。
気密性を確認しよう
前置きが長くなってしまいましたが、ここからが本題です。
一条工務店のi-smartを立てた方は、自分の家の気密性を確認したくありませんか?
建築中に気密性能も行ってくれますが、それはあくまで建築中の話であり、換気扇などもすべてふさいでの測定です。家がすべて完成した状態で、つまり引き渡しを受けて入居した時に、気密性を体感してみましょう。
もちろん数値としてあらわすことはできませんが、簡単に気密性を確認する方法を紹介します。
差圧感応式給気口がロックされていないことを確認してください。画像のようにロックバーが下に伸びている状態ならロックはされていません。
差足感応式給気口のカバーを外してください。引っ張れば簡単に撮れます。よほど荒い外し方をしない限り、まず壊れることはないので手前に引っ張って外してください。
レンジフードを作動させてください。
これで気密性を体感できるのです。気密性が高ければ、レンジフードの作動が弱モードでも、差圧感応式給気口のダンパーが開くのです。
我が家でも弱モードでダンパーが開きました。これは感動ものですよ。
窓のサッシだって窓引き違い窓なら隙間は絶対にできますし、家が完成しているのですから換気扇やロスガードなども当然付けられています。それでもダンパーが開くのです。どれだけ気密性が高いんでしょう!!
気密性まとめ
今では高気密を謳う大手ハウスメーカーが増えてきました。しかし実際はC値が2.0を超えてしまう家が大半なのです。それなのにローコストメーカーの一部や中堅どころのハウスメーカーだけでなく、地元工務店でもC値が0.5を切ることが珍しくなくなってきています。
気密性だけを考えれば、大手ハウスメーカーの大半が、高気密を謳っているローコストメーカーに負けているという印象を持つ方も多くなっていると想像します。
隙間をテープで埋めることは簡単です。大手ハウスメーカーもテープを使えばすぐに高気密な住宅を作ることができるはずです。しかし今現時点ではそのような流れになっていません。
これは日本の高気密住宅と呼ばれる家のC値の基準が5.0cm²/m²であるからです。この基準に入っていれば、高気密住宅であると言い切ることができます。しかも建築した家を一棟一棟測定するわけではなく、モデルハウスを作ってそれを測定した結果が5.0cm²/m²であっても、高気密住宅と謳うことができるのです。
大手ハウスメーカーは名前だけでも売れるので、「本当の」高気密住宅にする必要がないと考えている可能性はあると思っています。
大手ハウスメーカーに対抗するためには、ローコストメーカーや地元工務店は、アピールポイントを見つけなければなりません。価格だけでなく、性能でもアピールする部分がないと客を増やすことはできないのです。
そこで考えたのが、性能のアピールです。
高気密にして数値を示すことは、とてもいいアピールポイントとなります。しかも工法や家の精度は変えることなく、「シールテープ」を貼ることだけで高気密にできるのです。
壁に石膏ボードを貼る前にシールテープを貼ることは、それしか知らない人にとっては、気密性を高める当たり前の施工方法になります。その施工方法を見た施主さんは、「頑張ってやってくれているな」と思うでしょう。しかし私のように一条工務店の家しか知らない人間にとっては、壁などのパーツの精度を上げて突き合わせの隙間をなくして気密性を高めるのではなく、隙間をシールテープで埋めていることには違和感を覚えます。もちろん一条工務店以外の高気密住宅を作るハウスメーカーでも、精度を上げて気密性を高めているところがあるでしょう。しかしテープで隙間を埋めた高気密住宅が多数存在していることも事実なのです。
気密性が高いほうがいいことは間違いありませんが、気密性を高める方法が問題です。ハウスメーカー選びは、本当に難しいのです。
長々と書いてしまいましたが、これから家を建てようとされている方は、知れば知るほど満足感が高まるようなハウスメーカーと巡り合えたらいいですね。
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