家を建てる時、歳をとって体が不自由になった時のことを考えることは少ないようです。
歳をとると、立ち上がることすら簡単にできなくなることがあります。そうなってから家のあちこちに手すりを付けようと思っても、簡単にはできないことをご存知でしょうか。
手すりは家を建てる時、取り付ける位置をしっかり検討しておくべきなのです。 後から手すりを付けるのが大変な理由と、新築であらかじめ手すりを付けておくべき場所を紹介します。
手すりは後から付けると大変
家の壁は石膏ボードが貼られているだけです。石膏ボードはとてももろくいです。
学校の黒板で使うチョークのようなイメージで、荷重のかかる物を取り付けると、使っているうちにすぐにネジが外れてしまいます。
立ち上がるために家の壁に付けられた手すりを掴むと、手すりに体重のほとんどが掛かります。
石膏ボードでは、繰り返し手すりにかかる荷重に耐えることは、絶対にできません。 荷重の掛かる手すりを付ける場合は、石膏ボードの内側に、1.2mm以上の補強板が付けられていなければなりません。
もしそれがない場合は、壁紙と石膏ボードを剥がし、補強板を入れてから、また石膏ボードと壁紙を貼ることになります。 コンセントやスイッチなどがあれば、追加した補強板には、その部分もくり抜く加工をしなければなりません。とても手間がかかるので、費用も多く必要になります。
某有名ハウスメーカーで家を建てた友人が、親と同居することになりました。親は足腰がかなり弱っていて、歩くのも大変なほどだそうです。
同居するにあたり問題になったことは、トイレなどに手すりがないため、立ちあがるのに大変な苦労をするということです。 そのため急遽、家中に手すりを取り付ける必要が出てきました。
某有名ハウスメーカーの一般壁は石膏ボードだけだったため、そのままでは手すりを付けることができませんでした。壁紙や石膏ボードを剥がして補強番を入れる作業が必要になったため、相当な手間と費用が掛かったようです。
手すりは後からでも付けられますが、付ける場合は大変な手間と費用が掛かることが多いです。 足腰の悪い人との同居時のことを考えるだけでなく、歳を取れば自分も、足腰が弱くなってトイレで立ち上がるのが大変になるかもしれません。
そのようなことを考えて、家中に手すりを付けておくと、いざという時にとても役に立つのです。
どんな人でも足首の捻挫や、足の骨折などをする可能性はあります。そのような場合でも、手すりがあると便利に感じられることでしょう。 手すりを付けることは家を建てる時、考えておくべき大切なことなのです。
手すりを付けるべき場所
わが家で手すりが付いている場所は、以下です。
- 玄関
- トイレ
- 浴室
- 階段
玄関
靴を履くときに玄関に腰掛けます。この時に手すりがあると、座るのにとても便利です。
もちろん靴を脱いでから立ち上がる時にも手すりがあるととても楽です。 玄関には縦型の手すりを付けておくことをお勧めします。
玄関の手すりは、あると邪魔でスマートではなくなってしまいそうなイメージを持っている人がいるかもしれません。しかしわが家では邪魔に感じることも、野暮ったく思えることもありません。
付ける場所は、靴を履くために座る時や、脱いでから立ち上がる時に掴みやすい位置に付けます。
わが家では玄関の上り口とほぼ同じ位置に手すりを付けています。
トイレ
トイレは完全なプライベートの空間なので、家族といえども中に入って立ったり座ったりすることを、他の人が手伝うことはためらいがちな所です。足腰の弱い人でも自力で座ったり立ち上がったりできるように、手すりを付けておくことが望ましいのです。
取り付け位置で使い勝手は大きく変わります。慎重に場所を検討しましょう。 狭いトイレだと、手すりを付けると邪魔になることがあります。手すりがあっても邪魔にならないトイレ個室の広さであるかどうかは、しっかり考えておきましょう。
設計士さんに相談すれば、手すりが邪魔になる広さなのかどうかは、考えてくれるはずです。自分で無理に考えず、設計士さんの経験を頼ることも大切なことです。
浴室
浴槽から立ちあがる時に楽にできるよう、浴槽の奥側に手すりを付けていると快適です。
浴室の出入りは、シャワーパイプが手すり代わりになります。
浴槽は深いので、出入りは足腰が弱いと大変です。少しでも楽になるように、2箇所に手すりを付けることを考えておくといいでしょう。
知っておいて欲しいことですが、浴室に手すりを後付けするのは難しいことは理解しておいてください。
浴室は他の部屋と違って、特別な壁施工がされていることが多いです。入り口を除く部屋の壁全体に、完全な防水性を持たせる必要があるからです。壁も表面を剥がすと石膏ボードが出てくるような、他の部屋とは違います。
そのため家が完成してから、壁を剥がして壁の中に補強板を入れることができない場合もあるのです。 浴室に手すりを付けたいと考えるなら、家を建てる時に検討しておくことが望ましいです。
階段
階段には両側に手すりがあると安心です。
歳を取った時、片手が不自由になってしまうこともあります。若い人でも、片手を怪我することがあるかもしれません。 片側にしか手すりがないと、登る時か降りる時のどちらかに、不自由を感じることになります。
ボックス階段では階段の両側に手すりを付けると快適です。 オープン階段では、壁と逆側には必ず手すりが付けられます。
それに加えて壁側にも、手すりを付ける方がいいでしょう。
標準では片方しか手すりが付けられない場合もあります。その場合は、オプションでもう片側の壁にも手すりを付けておくと安心できます。
ただし狭い階段の場合、両側に手すりを付けると幅が狭くなって、大型の家具を二階に運べなくなることもありますので、注意が必要です。
自分で手すりを付けてみよう
手すりは自分で後から付けることが可能です。 ただし先ほど説明したとおり、壁の中に補強版が入っていないと、付けるのが少々難しいです。
それでは手すりは後から付けることは不可能なのかというと、そうではありません。壁の中にある木製の補強板や柱や梁などを見つけることができれば、そこに手すりをねじ止めできるのです。
しかし壁を叩いてみたところで、正確に壁の中の梁の位置を知ることは難しいです。
でもとても便利な梁探しグッズがあるのです。
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この製品はシンワ測定から販売されている下地探し「どこ太」です。下地を簡単に探すことができます。
公式の動画がありますのでご覧ください。
とても小さな穴を開けて梁を確認します。穴を開けるのはためらう方もいるかもしれませんが、天井の穴は思いのほか目立ちませんので、心配する必要はまったくありません。
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この道具で梁などの位置を探し、そこに手すりを付けるのです。 わが家では玄関とトイレは、縦型70cmの手すりが付けられています。後付けで買うならば、60cmの物が種類も豊富で長さもちょうどいいでしょう。
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これをねじ止めするのですが、ある程度太い木ネジでないと、取り付け強度が足りなくなります。 20-6X50 のビスがちょうどいいでしょう。
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このクラスのネジを閉めるには、インパクトドライバーがあるととても楽です。DIYに興味のある方は、購入しておくといろいろなシーンで使えて便利ですよ。
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手すりを後付けするには、梁などがない場所には付けられません。手すりの場所は、ほんの少し思ったところと違うだけで、使い勝手が大きく損なわれることがあります。
壁紙や石膏ボードをはがして補強版を入れ、それから手すりを付けるのであれば、ベストの位置に手すりが付けられます。
費用は掛かりますが、理想の場所に付けることも大切なので、自分で手すりを付ける場合は、「たまたま取り付けたい位置に梁がある場合」だけに限定した方がよさそうです。
まとめ
わが家では手すりを必要な場所に付けたため、86歳になる祖母も快適に生活しています。
最初は手すりが家のあちこちにあると、スマートに見えないのではないかと心配しました。しかし入居して暮らしてみると、手すりが邪魔だとか見栄えが悪いと感じたことがありません。
絶対に手すりは新築するときに付けておきましょう。後から付けるのは大変ですよ。